キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム

[君もまた土に還り]
UmarKhayyam عمر خیام RUBAIYAT رباعیات.

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)

 11世紀のペルシャ詩人による四行詩。「ルバイヤート」とは、そのまま四行詩という意味だ。

 『ルバイヤート』は、わたしにとって人生の1冊である。文句なしに格好いい。人生について、悲しみ、嘆き、そして楽しもうというその心が好きだ。

 死んだら土に帰る、地上のことなど意味はない。先に待つものは無だ。だから「一瞬を楽しめ」と詩は唄う。要は「酒を飲め」ということだ。じつに、まったくシンプルな話。

 「今に大空の利鎌が首を掻くよ」「お前が消えたって盃だけは残るよ!」「あの人たちの言ったことはただの風だよ」など、強烈な印象を放つ台詞にたくさん出会える。妙にハイテンションな訳も、読んでいるとだんだん楽しくなってくる。

この永遠の旅路を人はただ歩み去るばかり、
帰ってきて謎をあかしてくれる人はない。
気をつけて、このはたごやに忘れものをするな、
出て行ったが最後二度と再び帰ってはこれない。

愛しい友よ、いつかまた相会うことがあってくれ、
酌み交わす酒にはおれを偲んでくれ。
おれのいた座にもし杯がめぐって来たら、
地に傾けてその酒をおれに注いでくれ。

さあ、一緒にあすの日の悲しみを忘れよう、
ただ一瞬のこの人生をとらえよう。
あしたこの古びた修道院を出て行ったら、
七千年前の旅人と道伴れになろう。

 いつか自分も、千年前の詩人と道連れになりたいものだ。なんか、たいくつしなさそう。

 ルバイヤートの中で、とにかくいっぱい出てくるのが「酒」と美少年。ハイヤームの酒と美少年への愛がいい。

 「腑に落ちないのは酒を売る人々のこと、このよきものを売って何に替えようとか?」。私の周りにも、「酒の語源は「生命の水」なんだ!」などと言い訳にして飲む愛飲家がいる。いつの時代も、人は変わらない。


追記:
 いろいろ感想を見ていると、ハイヤームさんが「アル中」扱いだったりする。イスラム教は現世での戒律はばりばりなのに、天国は美女がいっぱいいてはべらし放題、酒も飲み放題という、じつに俗世的な天国像だ。だからハイヤームは「現物をとれ、あの世の約束に手を出すな」と言ったのであって、人生いやなことばっかりだから酒に逃げたというわけではないと思うのだけれどね。自分の見える範囲でしか考えないと(すべての人間がとらわれる思考の枷であり、だからこそ想像力が大事なわけだが)、こういう感想になるのだなあ。