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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『天使の蝶』プリーモ・レーヴィ

[自然界に人間]
Primo Levi STORIE NATURALI ,1966.

天使の蝶 (光文社古典新訳文庫)

天使の蝶 (光文社古典新訳文庫)

 イタリアの化学者かつ作家であるレーヴィの短編集。

 著者は、第二次世界大戦中、ユダヤ人としてアウシュビッツに収容されて生還した経歴を持つ。その苦い記憶によるところがあるのか、それとも化学者であるからか、彼の人間と自然に対する目線はおもしろい。
 「自然界の物語」という原題のとおり、人間は自然との関係の中に描かれる。思い通りにしようとする人間と技術のパワーバランスは、時に崩れて時に逆転する。人間と現代文明へのアイロニーがあるが、そこまで直接的ではないので、肩は張らずに読める。

 ずいぶんと不思議な作品を訳したなあと思う。レーヴィで、しかも短編集。光文社のイタリア文学のチョイスのマイナーさが、アメリカ文学の王道さと反比例しているみたいだ。以下、各編の感想。


「ビュティニアの検閲制度」:
 「それでいいのか人間よ」という感じ。これで、本書の最後にも検印ついてたらもっとシニカル。

「天使の蝶」:
 表題。もし自分が不完全だとしたら、人は完全を望むものか?倫理の問題というよりは、哲学の問題かと。

「詩歌作成機」「低コストの秩序」「美の尺度」「完全雇用」「退職扱い」:
 NATCA社の営業、シンプソン氏シリーズ。いつも変な発明品を作るNATCA社の新作をシンプソン氏が説明する。なんかドラ○もんのような話だなあと。最後がディストピア的。かわいそう。


 新しい技術によって、人は新しい何かができるようになる。自然と人間の、利便と幸福の、和解と衝突は繰り返され。


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