『恐るべき子供たち』ジャン・コクトー
[子供部屋という王国]
Jean Cocteau LES ENFANTS TERRIBLES , 1929.
- 作者: コクトー,中条省平,中条志穂
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/02/08
- メディア: 文庫
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パリの下町に住む子供たちの世界が、静かに崩壊していく物語。
光文社新訳文庫は、発刊以来チェックしているが、特にこの「恐るべき子供たち」は、コクトー自身が書いた挿絵があるのが見所。雪合戦のシーンの美青年ダルジュロスや、エリザベートの肖像などは、なかなかに印象的。
この物語は、シェイクスピアのような「劇場意識」が強い作品だと思った。 舞台は、子供だけの混沌の空間の「子供部屋」で形作られる。
子供部屋の住人でいられるのかそうでないのか? けっきょく、最後まで「子供」でいられたのはポールとエリザベート姉弟だけで、彼女らもそして退場していく。
この作品はコクトーが薬物中毒の最中に書かれたという。なるほど、世界が浮遊するようなこの感覚。子供のころは、逆に今よりも死が身近にあった気がする。
世界は幻想的で、美しく、子供たちの王国は静かに消滅する。
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