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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『悪魔の辞典』アンブローズ・ビアス

[定義してみせよう]
Ambrose Gwinnett Bierce THE DEVIL'S DICTIONARY , 1911.

新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)

新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)

甘い酒より辛い酒を、感傷よりは思慮分別を、ユーモアよりは機知を。


 18世紀から19世紀を生きた、アメリカの毒舌文筆家が作る、「辞書」。

【愛国者:部分の利害の方が、全体のそれよりも重要だと考えているらしい人。政治家に手もなくだまされるお人よし。征服者のお先棒をかつぐ人。】

 しょっぱなからこれなので、どんな感じかはわかっていただけると思う。
 
 ジャーナリストであった彼らしく、政治や文筆に関わる定義が多い。 中には首をひねるものもあれば、「なるほど」と納得するものもあり。 女性の扱いがひどいので、なにか女性に関する因縁でもあるのかとは思ったが。

 「戦争」「平和」「人道主義」などの、いかにもな定義よりも、「安堵」「鵞鳥」「クラリネット」「サーカス」「早熟な」「マカロニ」あたりの、一見地味な定義の方が、けっこう面白かった。

 ビアスは、著作もさることながら、彼の人生もなかなかにおもしろい。メキシコ内戦の時に現地におもむき、そのまま行方知れずになって、伝説と化した。この逸話をモチーフにした小説もある(ジェラルド・カーシュの「壜の中の手記」)。

 ビアスのシニカルな笑い声は、今なお、あちこちに響き渡る。


recommend:
芥川龍之介『数珠の言葉』 (ビアスに触発されて)
ジェラルド・カーシュ『壜の中の手記』 (ビアスをモチーフにした話)
カルロス・フエンテス『老いぼれグリンゴ』 (ビアスの消失のもうひとつの仮説)