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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『かもめのジョナサン』リチャード・バック

アメリカ文学 ☆☆☆

[誰よりも速く]
Richard Bach JONATHAN LIVINGSTON SEAGULL , 1970.

かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)

かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)

われわれ一羽一羽が、まさしく偉大なカモメの思想であり、自由という無限の思想なのだ。


 哲学とダンディズムを心に抱くカモメの話。大学入学したてでお金がないころ、学校の購買で立ち読みした思い出の1冊である。なんだかあまりに変な本なので、翌日にけっきょく購入してしまった。


 他のカモメとは違うということをはっきりと自覚しつつ、自分の限界に挑戦するカモメのジョナサン。他者とずれていてもかまわずに、自分の道をつきすすみ、自由と誇りを求めるその姿に、世界中の若者が焦がれたらしい。

 思うに、この本がベストセラーになったのは、なんだかんだとジョナサンがカリスマ的存在になり、他者から認められたからではないだろうか。ようするに、ヒーローなんだと思う。孤高の存在のまま、誰にも知られることなく限界を越えて、人知れず消えていく話だったら、たぶんここまで売れなかったような気がする。

 でもだからといって、この本が嫌いなわけでもない。Part3は微妙だったが、Part2までは少年漫画のようなおもしろさがある。心同士で対話したり、「おれは完全なカモメ、無限の可能性をもったカモメとしてここにある!」と叫んだり、時間や空間を飛び越えたり。特にジョナサンとサリヴァンの友情は必見である。

 天国のようなところにきて修行にはげむジョナサンが、地上にかえると言ったとき、さみしくなるな、と言ったサリヴァンに、ジョナサンが「馬鹿なことをいうな!」と言う。

……空間を克服したあかつきには、われわれにとって残るのは「ここ」だけだ。そしてもし時間を征服したとすれば、われわれの前にあるのは「いま」だけだ。そうなれば、この「ここ」と「いま」との間で、お互いに一度や二度ぐらいは顔をあわせることもできるだろう?そうは思わないか、え?」
サリヴァンは、思わず笑い出した。
「この気ちがいめ」彼は親しみをこめてそう言った。

 ここまで熱いカモメがいるとは!
 あまりまじめには受け取りたくない作品かなと思う。日常を生きる者を上から目線で見て、日常から脱し、他者を啓蒙してやろう的な目線がやっぱり気になるので。コミックとして読めば、それなりに楽しめる。


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