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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン

[生きにくい世界と若者が]
Boris Vian L'ECUME DES JOURS ,1947.

うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫)

うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫)


日々の泡 (新潮文庫)

日々の泡 (新潮文庫)


 フランス生まれの「永遠の青春小説」。「20世紀の恋愛小説中もっとも悲痛な小説」という端書があれば、それは読みたくもなってくる。

 この本がフランスの若者の間で大流行したのだというから、すごい。なにがすごいのかというと、この不可思議な幻想の世界の話が流行になるというその風土。日本でも読む人はたくさんいるだろうけど、ブームになることはきっとないのでは。


 本書は、3組の恋人たちと、いかれた世界の物語。「ライターに太陽の光を数適たらしこむ」。 物語はこんな表現に満ち満ちている。

 外の世界はことごとくいかれていて、まるで残酷な童話のようだ。 すぐ人は死ぬし、死に方もいちいち異常。 むしろ主人公の6人だけが普通というか、世界にそぐわない純粋さを持っている。 それが「若者」であり、「青春」ということだろうか。

 ものすごく「詩」ぽい小説だと思った。掛詞や造語などの言葉遊びがこの作品の魅力のひとつでもあるのだが、原書で読めない日本人にとっては、どうしても分からないニュアンスがある。 本当はもっとおもしろいんだろうなあと思うと、残念でならない。

 それでも、奇想天外な世界観は十分に楽しめる。 特に、主人公コランの作ったピアノを弾くとその音に見合ったカクテルが出てくる「カクテル・ピアノ」は秀逸で、本気で我が家に欲しいと思ってしまった。

 肺に蓮の花が咲く病気で、離れ離れになる恋人たち。狂いながらも美しい情景の欠片が、浮かんでは消え、浮かんでは消える。


追記:

 ちょっと前に映画になった「恋愛写真」の小説で、「うたかたの日々」が小道具で出てきたのを覚えている。結局、「恋愛写真」は本書の下手な焼き直しもどきでしかなかったが(それでもあれは売れましたね)。

 ほか、岡崎京子が漫画化していたり、それなりに日本ナイズされて、日本文化に影響を与えているという、なんか不思議な立ち位置の本。


recommend:
コクトー恐るべき子供たち』 (若い恋人は生きにくい)
サルトル『嘔吐』 (「うたかた」にはサルトルのもじりがいっぱい出てくる)
ブローディガン『西瓜糖の日々』 (雰囲気がよく似てる)