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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『類推の山』ルネ・ドーマル

[より高いところへ行きたい]
René Daumal  LE MONT ANALOGUE , 1956.

類推の山 (河出文庫)

類推の山 (河出文庫)

「非ユークリッド的にして、象徴的に真実を物語る登山冒険小説」(冒頭より)


 フランスのシュルレアリズム作家による、未完の物語。わりと冒頭の予告通りの話。

 この話は人類の行動について、語ろうとしている。なぜ人は、祈り、望み、努力を重ねてきたか?

 地図上にはない、しかし最も高い山があると考え、雑誌に投稿した人がいる。その名を「類推の山」という。「類推の山」は、<天>と<地>を結ぶ、象徴的な山であり、「実在」しなければならず、また人間が到達可能でなければならないという。
 なぜなら、もし人間が到達可能でなければ、希望はなくなってしまうから。 山は、地図には載っていないが、確かに存在するという仮説のもと、信じて集まった人々が、計算に基づいて、冒険に乗り出していく。

 冒険物語、SFのような「類推の山」の位置把握と行き方(海賊王の漫画を思い出した)、また実際にあっさりとたどり着いてしまうあたりが、「え、そんなんでいいの?」と思わせられるが、これは象徴の話らしいので、そこは打ちやって読む。しかし、山に登るのはどえらく、難しい。

 山は登山としての目的であり、また「天=高次」にたどり着きたいという、人間の果てしない望みの象徴でもある。 高次の次元への人類の接触を望み、それのために全ての努力を注ぐ。さて、その心は? という話。


 この本には、「雲をつかむような」という形容句が似合う。 未完であることもそうだが、分かりやすいようで分かりにくい。人物も全員浮世離れ、どちらかというと、神話に近いかもしれない。

 山に住む高次の人々は問いかけてくる。

 「で、あなたはいったい何を探し求めているのか?」

 その答えは、分からない。
 この小説は未完だし、そして人類もまたその答えにたどり着かない気がする。


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