『はつ恋』ツルゲーネフ
[甘く苦い]
Иван Сергеевич Тургенев Первая Любовь ,1860.
- 作者: ツルゲーネフ,神西清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1987/01
- メディア: 文庫
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これが恋なのだ、これが情熱というものなのだ、これが身も心も捧げ尽くすということなのだ。
初恋は、実らない。おとぎ話のようで、それでいて真実のような、よく耳にする言説。
多くの人は、「初恋の甘さ、苦さ」という、漠然としたイメージを持っていないだろうか。恋も愛も、古今東西、人それぞれに多種多様で、多くの物語が語られきているが、なぜか初恋はみんな似たような雰囲気を持っているように思える。本書は、まさに「初恋」ど真ん中の物語だ。
なんといっても初恋は、人生ではじめて、自分と親以外に心を傾けることだ。しかもその引力は強力で、自分ではどうしていいかもわからない。この不器用さ、真剣さ! 年を取ったなあ、としみじみしてしまう。
恋をして情熱を燃やし、そして幕引き。 いわゆるハッピーエンドではない。本書もまた、初恋のジンクスに引き込まれる。主人公の想いは叶わず、ジナイーダも彼女の想いを果たしたわけでもなく。
それでも彼女とその想い人は、ともに死の淵をまたいで、主人公の前から消えてしまった。 彼らは向こうに行ってしまって、主人公だけがまだ生きている。
この、徹底的に取り残されてしまったような切なさ。 主人公は、二人の恋の間では、脇役でしかなかった。
森は秘密を隠している。ロシアの庭のような、哀愁がただよう詩的な作品。