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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『はつ恋』ツルゲーネフ

[甘く苦い]
Иван Сергеевич Тургенев Первая Любовь ,1860.

はつ恋 (新潮文庫)

はつ恋 (新潮文庫)

これが恋なのだ、これが情熱というものなのだ、これが身も心も捧げ尽くすということなのだ。


 初恋は、実らない。おとぎ話のようで、それでいて真実のような、よく耳にする言説。

 多くの人は、「初恋の甘さ、苦さ」という、漠然としたイメージを持っていないだろうか。恋も愛も、古今東西、人それぞれに多種多様で、多くの物語が語られきているが、なぜか初恋はみんな似たような雰囲気を持っているように思える。本書は、まさに「初恋」ど真ん中の物語だ。

 なんといっても初恋は、人生ではじめて、自分と親以外に心を傾けることだ。しかもその引力は強力で、自分ではどうしていいかもわからない。この不器用さ、真剣さ! 年を取ったなあ、としみじみしてしまう。

 恋をして情熱を燃やし、そして幕引き。 いわゆるハッピーエンドではない。本書もまた、初恋のジンクスに引き込まれる。主人公の想いは叶わず、ジナイーダも彼女の想いを果たしたわけでもなく。

 それでも彼女とその想い人は、ともに死の淵をまたいで、主人公の前から消えてしまった。 彼らは向こうに行ってしまって、主人公だけがまだ生きている。
 この、徹底的に取り残されてしまったような切なさ。 主人公は、二人の恋の間では、脇役でしかなかった。

 森は秘密を隠している。ロシアの庭のような、哀愁がただよう詩的な作品。


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