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『トーベ・ヤンソン短篇集』トーベ・ヤンソン

[自然を描く]
Tove Marika Jansson

トーベ・ヤンソン短篇集

トーベ・ヤンソン短篇集


 トーベ・ヤンソン、彼女の小説は、「書く」より「描く」という言葉がにあう。フィンランドといえばムーミン。トーベは、そんなステレオタイプさえ生み出した、フィンランド生まれの女性作家。「ムーミン」シリーズは、アニメでおなじみの人も多いだろう。かばのような(失礼)ムーミンと、さすらいのスナフキン、そのほかゆかいな仲間が繰り広げるほのぼの物語……それが、日本におけるムーミンの一般的なイメージだろうと思う。
 ところがあのアニメ版ムーミンは、本当のムーミンやトーベ・ヤンソンの作風とはちょっと違っていて、原作は、もうちょっとシュールで、野生味がある。

 本書は、そんなトーベの自然へのまなざし、たくましさが楽しめる。日常に、ふらりとトーベ・ヤンソンの短編を読めて、幸せだなあと思える。 どの話も短く、しかも良質のものが選ばれているから、気負わずに読みたい時にさらりと読める。

 トーベは、長い間、岩だらけの孤島、クルーヴハル島で過ごした。彼女の自然への視線は、どこか人間というよりは、動物的だ。ごつごつとした岸壁、そこに生えるたくましい野生の植物、生物、そうしたものへの描写が、いきいきと描かれる。 老いも若いもひっくるめたような感性が光る。

 ふと息抜きのように読みたくなる本。


recommend:
トーベ・ヤンソン『少女ソフィアの夏』……児童書だけど、これもよい。ソフィアとばあちゃんの対等な話っぷりがおもしろい。
ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』……灯台で静かに暮らすこと