キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『観光』ラッタウット・ラープチャルーンサップ

[ガイジンさん、いらっしゃい]
Rattawut Lapcharoensap SIGHTSEEING ,2006.

観光 (ハヤカワepiブック・プラネット)

観光 (ハヤカワepiブック・プラネット)

「タイの国は能無しとガイジン、犯罪者と観光客の天国よ」(「ガイジン」より)


 ものすごく舌をかみそうな名前の、タイ系アメリカ人による短編小説。

 作者はミシガン大学大学院の創作科出身で、本書は英語で書かれている。タイ人の目線から、タイの人々の生活が描かれるこの本が、アメリカやイギリスで好評だというのは示唆的だ。自分たち(西欧)のものではない視線、地元の人の「本音」がかいま見えるからだろう。まさに「観光」的である。

 観光客は、観光客の目線でものを見る。実物を見ているようでいて、ガイドブックに載っているものを見ている。……なんてことは、ブアスティンなんかの頃から言われることだが、それでもやはりそうかもしれないと、自分自身の旅での思い出からしても思う。

 現地の人々が愛想よく話かけてきて、どんなに交流ができたと思っても、彼らが現地語で話している時に、疎外感を感じる。そしておそらく彼らは、私たち観光客を笑っているのだと思った体験も少なくはない。タイの人々が、これを読んでどう思うのかはわからないけれど、旅をする人間なら一度は感じたことのあるざわめきと疎外感を、この本の中に見つけることができるのではないだろうか。

 個人的に印象に残った作品について。

「ガイジン」「観光」:タイの人々から見た異国人への視線。
「こんなところで死にたくない」:タイで暮らす異国人の心を描いた作品。
プリシラカンボジア難民。タイ独特のモチーフ。
「闘鶏者」:闘鶏。こちらもタイらしさがある作品。

 タイの人々に向けた愛惜の目線もあるけれど、外国人への視線も強く感じる。これを読むことも、まさに「読む観光」である 。


recommend:
ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』 (インド系アメリカ作家。かなり同じ傾向)
ポール・セロー『ワールズ・エンド 世界の果て』 (これも異国でずれこむ話。村上春樹訳)