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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『ある放浪者の半生』V.S.ナイポール

[なじみきれない]
.V.S.Naipaul HALF A LIFE , 2001.

ある放浪者の半生

ある放浪者の半生


すべてが変な方向に進んでいく。 世界はそこで止まるべきであったとしても、果てしなく動いていく。


 移民作家が描く放浪生活。
 「HALF A LIFE」という題名のように、この小説には、「半分半分」の人、「半分の人生」が数多く登場する。 作者自身もまた、旧イギリス領は西インド諸島、トリニダードに生まれ、イギリスに渡った流れ者である。

 主人公は、故郷インドで作家サマセット・モームの名前をもらい、イギリスで友人の真似をして過ごし、アフリカで妻の土地になじもうとする。

 しかし彼はどこでも「自分の人生」を生きている気がしない。自分の人生を始められない。 そんな生き方に嫌気がさして、また新しい場所に行こうとするけれど、その先に果たして「本当の自分の人生」が待っているものなのだろうか?

 この物語は、「始められない物語」である気がする。 世界は動いているし、物語は続いているのに、それでも何も始まらない。それがどうにも歯がゆいし、ままならない。


 「本当の自分」とはなにか?そんなものはあるのだろうか。掘ればいつかは見つかる遺跡のように、「真実の形」として出てくるもの? まさか。

 この本を読んでいると、自分の人生を生きることが、思っているより難しいことのように思えてくる。 自分で自分を把握しきれない、そのはがゆさと空しさ。日本は文化摩擦や対立の少ない土壌だが、それでもどちらにもなりきれない中途半端な物悲しさを、多くの人が抱えている。
 アイデンティティを外の世界に探したり、ほかの人の目に映る自分の影に求めたり。中途半端な人生を送るもの悲しさを描いた、現代的な物語。


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