キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『闇の奥』コンラッド

[暗いその先に分け入って進む]
Joseph Conrad HEART OF DARKNESS, 1899.

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)


闇の奥 (光文社古典新訳文庫)

闇の奥 (光文社古典新訳文庫)


 イギリスの作家、コンラッドの中篇。

 コンラッドは、自身が元船乗りという一風変わった経歴の持ち主。船でさまざまな大陸を渡った異国の風景が、彼の作品のいたるところに満ちている。だからこそ、西欧ではそのオリエンタリズムが、熱狂的に迎えられた(「オリエンタリズム」で著名なエドワード・サイードも、コンラッドの文学研究者である)。


 本書は、アフリカの植民地に象牙を採りにいく白人青年の、アフリカでの物語。今まで数々の映画監督が映画化を試みたが、断念したと言われている。「地獄の黙示録」がこれをもとにしているが、あくまで翻案である。

 どこまでも突き進んでいこうと思えばいける、闇の奥。 さて、その先は?


 「過ぎ行く船の甲板から陸地を眺めることは、なにか謎でも考えるような興味がある」と、主人公マーロウは、密林へ行く途中で語る。船と対岸の間の流れ、そして密林の河の流れは、普通の生活をしている人々と自分達をどうしようもなく分けてしまった「一線」の象徴であるように見える。

 友人クルツはその一線を飛び越えて、奥へと踏み込んでいってしまった。主人公マーロウもまた一線を越えかけるが、クルツと違い、まだここに留まり続けている。最後に、マーロウはクルツの婚約者に嘘をつく。それは、クルツのようになりきれないことの証明であるように思う。

 人は、火を使い、闇を拓いて生きてきた。それなのに、なぜ一方で、人は闇の向こうに進みたがるのか。おそらくそう思う人は少ない。しかし、ある人間に対しては、闇は底知れない引力を持っている。

 そんな人間の不可解な衝動について、本書は語ろうとしているように思った。

 しかし、今読んでみるとやはりどうしても彼の異国観は古くさい。アフリカ人のいわゆる「土人」っぷりもすごく、今これを書いたら、いろいろなところからバッシングが来るに違いない。アフリカの闇の奥は、さて実はどこまであるのだろうか?

reccomend:
セリーヌ『夜の果てへの旅』 (自分を顧みず、闇が深まる方向へと進んでいく)
ゲーテファウスト』 (人は何かを追い求め、何かを犠牲にする)