『壜の中の手記』ジェラルド・カーシュ
[語り騙る]
- 作者: ジェラルドカーシュ,Gerald Kersh,西崎憲,駒月雅子,吉村満美子,若島正
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/11/25
- メディア: 文庫
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まるでどこかの旅先で知り合った老人が、「ひまつぶしに話でもいかがかな?」と語りだすような、そんな不思議なイメージ。
この本はすべてが、すでに書き手が「誰かから聞いた話」という形で語られる。 ああ、物語とは本来このようなものだったと思い出す。
人から人へと語り継がれる物語。 そのたびに話は不思議さを増し、同時にそれが真実かどうかなんてどうでもよくなってくる。 むしろ奇妙な話をどれだけ魅力的に語るかで、その物語の価値は決まる。 その点、ジェラルド・カーシュの腕はお見事。
表題「壜の中の手記」のほか、「豚の島の女王」「ねじくれた骨」「時計収集家の王」がおすすめ。 なぜか日本人がたくさん出てくるが、それもちょっとした見所のひとつ。
読書後には、誰かに「こんな話を知っている?」と、語ってきかせたくなる。
reccomend:
プーシキン『スペードの女王・ベールキン物語』 (オールド・ファッションの物語といえば)
アンブローズ・ビアス『悪魔の辞典』 (「壜の中の手記」は、彼がモデルとなっている)
カルロス・フエンテス『老いぼれグリンゴ』 (ビアスの行方の物語)