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キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

『ペスト』カミュ

フランス文学 ☆☆☆☆☆

[人がそれぞれ選択する道]
Albert Camus LA PESTE, 1947.

ペスト (新潮文庫)

ペスト (新潮文庫)

 
 アルジェリア生まれのノーベル賞作家、カミュによる長編。
 もはや驚異的な作品。架空の設定で、ここまでリアルな人間像を描けるとは。

 ペストといえば、西洋にとっては死の恐怖と同じ意味を持つ。「Brack Death」、黒死病。重く暗く、逃げることもできない定めとしての死のモチーフ。この話はいわゆる象徴としてのペストだけど、鳥インフルエンザなどのパンデミックが予想される大型伝染病の危機が静かにせまってきている現在、あながち象徴とも言い切れない意味合いを持っているかもしれない。


 「死」という、絶対的に逃れられないものを目の前にした時、人はどんな行動をとるか。ペストには、善もなく悪もない。ただ、人々を容赦なく分断して、同時に人びとを強制的に平等の条件の下に置く。 死の恐怖は、誰にでも等しく訪れる。

 その中でどう生きるか、どう選択するか? 人の命そのものに意味はなくとも、「生きること」の価値はあるのだとしたら、ペストの壁の中のような、極限の状況で、そうしたものは現れるように思うのだ。

 この物語には、実に多くの人間が、そして多くの人間の心が登場する。
 「壁の内の人間」と「壁の外の人間」。 「嘆く人間」と「動く人間」。 「生きる人間」と「死ぬ人間」。 「信じる人間」と「信じない人間」。 「帰る場所のある人間」と「帰る場所を失った人間」。

 ここには、同じ舞台で、さまざまな「選択肢」、そして人々の「選択」が提示されている。 自分だったらどうするだろう。この本を読むと、意識をペストの壁の中に放り込まずにはいられない。


G・ガルシア=マルケスの著作レビュー:


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