ボヘミアの海岸線

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『別荘』ホセ・ドノソ|分厚いベールをかける黄金の白痴

 「私たちはベントゥーラ一族なのよ、ウェンセスラオ、唯一確かなのは外見だけ、よく覚えておきなさい」——ホセ・ドノソ『別荘』

分厚いベールをかける黄金の白痴

 ドノソはわたしにとって「液体作家」である。読んだ後になぜか液体じみた印象が離れない。きちがい冥府小説『夜のみだらな鳥』は、どろどろの黒いタールの上に、蛍光色の砂糖菓子人形をぶちまけたような印象。『別荘』は赤緑黄のペンキ缶を壁に投げつけ、金銀の粉をふりかけて血みどろメレンゲをあしらった印象だ。

 端的にいえば、いかれている。頭のおかしい人々がロココにほほえみながら舞踏会を踊り、わたしたち読者に「あなたも踊りましょう?」と優雅に指を絡めてくるような作品をドノソは描く。圧倒的な理性の敗北、幼児退化のばぶばぶ、無知蒙昧のグロテスク、なのにそれでも西洋絵画のように美しいのだからやっていられない。

別荘 (ロス・クラシコス)

別荘 (ロス・クラシコス)

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