キリキリソテーにうってつけの日

海外文学/世界文学の感想ブログ。

南米文学

『アメリカ大陸のナチ文学』ロベルト・ボラーニョ

その教訓は明白だ。民主主義の息の根を止めなければならない。なぜナチはあれほど長生きなのか。たとえばヘスだが、自殺しなければ、百歳まで生きただろう。何が彼らをあれほど生きながらえさせるのか。何が彼らを不死に近い存在にしてしまうのか。流された…

『別荘』ホセ・ドノソ

「私たちはベントゥーラ一族なのよ、ウェンセスラオ、唯一確かなのは外見だけ、よく覚えておきなさい」——ホセ・ドノソ『別荘』 分厚いベールをかける黄金の白痴 ドノソはわたしにとって「液体作家」である。読んだ後になぜか液体じみた印象が離れない。きち…

『野性の蜜 キローガ短編集成』オラシオ・キローガ

「これは蜜だ」体の奥から食欲が涌きあがってくるのを感じながら、公認会計士は独りごちた。「蜜のいっぱい詰まった、蜂の巣房に違いない……」――オラシオ・キローガ「野性の蜜」 飲み干す死 作家が死をどうとらえ、どう描くかが気にかかる。シェイクスピアは…

『遊戯の終わり』フリオ・コルタサル

大きくカーブした線路が家の裏で直線に変わるそのあたりが、わたしたちの王国だった。——フリオ・コルタサル『遊戯の終わり』 異界への落下 夏になると南米文学に手がのびるのはここ数年来の習性で、モヒートを飲みながら南米の短編をつまむことを、夜な夜な…

『コレラの時代の愛』ガブリエル・ガルシア=マルケス

「人の心というのは分からないものだな」——ガブリエル・ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』 愛はただ愛であり 恋愛は精神疾患であるとつねづね思っているが、このまったく理不尽な感情の渦は、もしかすると熱病に近いのかもしれない。 舞台は熱病うずま…

『無慈悲な昼食』エベリオ・ロセーロ

“彼らは僕を昼食と見なしている”——エベリオ・ロセーロ『無慈悲な昼食』 獣になる ふしぎなものだ、「慈悲の昼食」という名がこれほど無慈悲に響くとは。 原題は"Los almuerzos"、「昼食」というとおり、木曜日の正午12時から金曜日までの12時までの1日を描く…

『ラテンアメリカ五人集』

<ちんこ>、君、ターザンになったな、一日一日、いい身体になって行くみたいだぜ、とぼくらはいったものだった。ーーバルガス・リョサ「子犬たち」 cinco autores ラテンアメリカ五人集 (集英社文庫)作者: M バルガス=リョサ,シルビーナオカンポ,M.A.アスト…

『パラケルススの薔薇』ホルヘ・ルイス・ボルヘス

「一輪の薔薇は、あっけなく燃え尽きるはずです」と弟子は挑むように言った。 「暖炉にまだ火が残っている」とパラケルススは応じた。 「この薔薇を火中に投ずれば、それは燃え尽きたと、灰こそ真実だと、おまえは信じるだろう。だが、よいか、薔薇は永遠の…

『顔のない軍隊』エベリオ・ロセーロ

「気をつけたほうがいいわ、先生。村が誰の支配下にあるのか、いまだに不明なんだから」 「誰の支配下だろうと、別に変わりゃしないさ」——エベリオ・ロセーロ『顔のない軍隊』 この世の煉獄 少々、ぶっそうな想像をしてみよう。例えば、つるつる顔ののっぺら…

『オスカー・ワオの短くも凄まじい人生』ジュノ・ディアス

髪を切って、メガネを外して、運動しなさい。エロ本を捨てなさい。あれは最悪よ。ママも嫌がってるし、あんなもの見てたら彼女なんてできない。——ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短くも凄まじい人生』 君はヒーロー 百貫デブで重度のオタク、年齢=彼女…

『夜になるまえに』レイナルド・アレナス

「覚えておくんだよ、わたしたちは言葉によってしか救われないってこと。書くんだ」——レイナルド・アレナス『夜になるまえに』 絶叫する生 夜とは、灯りが消えてものが書けなくなる時間であり、一度行ったらもう永遠に戻れない深淵のことである。キューバの…

『塩の像』レオポルド・ルゴーネス

というのも、これは疑いもなく、世にも稀な光景だからである。白熱した銅の雨! 炎に包まれる街! ——レオポルド・ルゴーネス『塩の像』 黙示録の光 先日の飲み会で、「バベルの図書館」の話が出たので、「バベルの図書館」シリーズについて書こうと思う。「…

『脱獄計画』アドルフォ ビオイ・カサレス

今からわたしは、科学者であることをやめて、科学のテーマの一つになる。今からはもはや苦痛を感じず、ブラームスの第四交響曲第一楽章の最初のモチーフに(永遠に)耳を澄ますことになるのだ。——アドルフォ ビオイ・カサレス『脱獄計画』 島という牢獄 共感…

『緑の家』マリオ・バルガス・リョサ

「密林はたしかに美しい。むこうのことはすっかり忘れてしまったが、あの色だけは今でもはっきりと憶えているよ、ハープを緑色に塗ってあるのは、そのせいなんだよ」——マリオ・バルガス・リョサ『緑の家』 ざわめく密林 2010年にノーベル文学賞を受賞したバ…

『夜のみだらな鳥』ホセ・ドノソ

外に5日間いて、ぼくは生きることへの興味を失った。ある詩人が言っているよ。『生きる? 生きるだと? なんだ、それは? そんなことは召使にやらせておけ』って。 楽園という名の冥府 『夜のみだらな鳥』を読んでいる最中、定期的に悪夢を見た。夢はだいた…

ノーベル文学賞とバルガス=リョサ、そして大事なものを噛み切られた男の話

ペルーの作家 マリオ・バルガス=リョサが、2010年ノーベル文学賞を受賞した。昨年のへルター・ミュラーがまさかの大穴だったので、今年はずいぶん順当に来たなあという感じ。 毎年、ノーベル文学賞授賞式の何が楽しいって、副賞としての「再版祭り」だったり…

『グアテマラ伝説集』アストゥリアス

[鉱物、あるいは古酒] Miguel Angel Asturias Leyendas De Guatemala,1930. グアテマラ伝説集 (岩波文庫)作者: M.A.アストゥリアス,牛島信明出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/12/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (17…

『作家とその亡霊たち』エルネスト・サバト

[辺境から] Ernesto R. Sabato El Escritory Sus Fantasmas, 1963.作家とその亡霊たち作者: エルネストサバト,Ernesto Sabato,寺尾隆吉出版社/メーカー: 現代企画室発売日: 2009/03メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (3件) を見る バート…

白水社版「スペイン・ラテンアメリカ作家 推薦図書リスト」

白水社発行の「エクス・リブリス通信」に掲載されていた、スペイン・ラテンアメリカ文学のおすすめ本リスト。 コメントは、ボラーニョ『通話』の翻訳者、松本健二さんのものを1部抜粋したり、適当につけたりしています。 物語ラテン・アメリカの歴史―未来の大…

『通話』ロベルト・ボラーニョ

[語らない不穏] Roberto Bolano Llamadas Telefonicas, 1997. 通話 (EXLIBRIS)作者: ロベルトボラーニョ,Roberto Bolano,松本健二出版社/メーカー: 白水社発売日: 2009/06メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 95回この商品を含むブログ (40件) を見る よ…

『創造者』ホルヘ・ルイス・ボルヘス

[不死の先でまた] Jorge Luis Borges El Hacedor, 1960.創造者 (岩波文庫)作者: J.L.ボルヘス,Jorge Luis Borges,鼓直出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/06/16メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 27回この商品を含むブログ (48件) を見る そのとおりか…

『愛その他の悪霊について』ガルシア・マルケス

[愛は悪霊のように] Gabriel Jose Garcia Marquez Del Amor y Otros Demonios, 1994.愛その他の悪霊について作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,旦敬介出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 11回この…

『不死の人』ホルヘ・ルイス・ボルヘス

[世界に酔いしれ] Jorge Luis Borges El Aleph,1949.不死の人 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)作者: ホルヘ・ルイスボルヘス,Jorge Luis Borges,土岐恒二出版社/メーカー: 白水社発売日: 1996/08メディア: 新書購入: 4人 クリック: 45回この商品を含むブログ…

『深い川』ホセ・マリア・アルゲダス

[石は歌う] Jose Maria Arguedas Los Rios Profundos ,1958.深い川 (ラテンアメリカ文学選集 8)作者: ホセ・マリアアルゲダス,Jose Maria Arguedas,杉山晃出版社/メーカー: 現代企画室発売日: 1993/12メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ …

『夜明け前のセレスティーノ』レイナルド・アレナス

[吹っ飛ぶ] Reynaldo Arenas Celestino Antes Del Alba , 1967.夜明け前のセレスティーノ (文学の冒険シリーズ)作者: レイナルドアレナス,Reinald Arenas,安藤哲行出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2002/04メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 60回こ…

『蜘蛛女のキス』マヌエル・プイグ

[言葉だけの官能] Manuel Puig El beso de la mujer arana 、1976.蜘蛛女のキス (集英社文庫)作者: マヌエル・プイグ,野谷文昭出版社/メーカー: 集英社発売日: 1988/10/20メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 27回この商品を含むブログ (55件) を見る 「あ…

『燃える平原』フアン・ルルフォ

[乾いた大地の風] Juan Rulfo El llano en llamas, 1953.燃える平原 (叢書 アンデスの風)作者: フアンルルフォ,杉山晃出版社/メーカー: 書肆風の薔薇発売日: 1990/12メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 24回この商品を含むブログ (8件) を見る メキシコ…

『アウラ・純な魂 フエンテス短編集』カルロス・フエンテス

[扉の向こう] Carlos Fuentes Macías Aura,1962. フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)作者: カルロスフエンテス,木村榮一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1995/07/17メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 54回この商品を含むブログ (25件) を…

『モレルの発明』アドルフォ・ビオイ=カサーレス

[あなたのそばに] Adolfo Bioy Casares La invencion de Morel , 1940. モレルの発明 (フィクションの楽しみ)作者: アドルフォビオイ=カサーレス,Adolfo Bioy Casares,清水徹,牛島信明出版社/メーカー: 水声社発売日: 2008/10メディア: 単行本購入: 6人 ク…

『オクタビオ・パス詩集』オクタビオ・パス

[描かれる時間] Octavio Pas Poética ,1935-1987.オクタビオ・パス詩集 (世界現代詩文庫)作者: オクタビオパス,小海永二,伊藤桂一,真辺博章出版社/メーカー: 土曜美術社出版販売発売日: 1997/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブロ…

『この世の王国』アレホ・カルペンティエル

[ブードゥー・マジック] Alejo Carpentier y Valmont El Reino de este Mundo, 1949. この世の王国 (叢書 アンデスの風)作者: アレホカルペンティエル,Alejo Carpentier,木村栄一,平田渡出版社/メーカー: 水声社発売日: 1992/07メディア: 単行本購入: 1人 …

『族長の秋』ガルシア・マルケス

[独裁者の孤独] Gabriel José García Márquez,El otoño del patriarca , 1975.族長の秋 他6篇作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arques,鼓直,木村榮一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/04メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 20回こ…

『エレンディラ』ガルシア・マルケス

[物語の渦まき] Gabriel José García MárquezLa increíble y triste historia de la cándida Eréndira y de su abuela desalmada ,1978. エレンディラ (ちくま文庫)作者: ガブリエルガルシア・マルケス,G.ガルシア・マルケス,鼓直,木村栄一出版社/メーカー: …

『伝奇集』ボルヘス

[無限、円環、迷宮] Jorge Luis Borges FICCIONES ,1944.伝奇集 (岩波文庫)作者: J.L.ボルヘス,鼓直出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1993/11/16メディア: 文庫購入: 32人 クリック: 158回この商品を含むブログ (161件) を見る わたしの読書歴の中で、ボル…

『悪魔の涎、追い求める男 コルタサル短篇集』フリオ・コルタサル

[都会の南米] Julio Cortázar Todos los fuegos el fuego, 1966. 悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)作者: コルタサル,木村栄一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1992/07/16メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 82回この商品を含む…

『ペドロ・パラモ』フアン・ルルフォ

[死者は語る] Juan Rulfo PEDRO PARAMO ,1955.ペドロ・パラモ (岩波文庫)作者: フアン・ルルフォ,杉山晃,増田義郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1992/10/16メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 41回この商品を含むブログ (79件) を見る 「誰しも同じ道を…

『予告された殺人の記録』ガルシア・マルケス

[無関心は人を殺す] Gabriel José García Márquez Crónica de una muerte anunciada, 1981. 予告された殺人の記録・十二の遍歴の物語 (Obras de Garc〓a M〓rquez (1976-1992))作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,野谷文昭,旦敬介…

『百年の孤独』ガルシア・マルケス

[時は、歴史は、人はめぐる] Gabriel José García Márquez Cien años de soledad , 1967. 百年の孤独作者: G.ガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arques,鼓直出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1999/08メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 807回この商品を…

現代企画室「ラテンアメリカ文学選集」

現代企画室「ラテンアメリカ文学選集」 20世紀ラテンアメリカを代表する作家たちの作品集。比較的スタンダードな作家群だが、本選集でしか気軽に手に入らない作家の作品もある。 『このページを読む者に永遠の呪いあれ』マヌエル・プイグ 『武器の交換』ルイ…